俳句の散歩道

                         2019年3月11日

【俳句の島について】

 

1.「俳句の島」の立ち上げ

 

  2018年4月、「俳句の島」というサイトを立ち上げました。

 

  このサイトの夢は俳句という短詩系文学を国民レベルで楽しむ日本の

  文化を未来に伝えてゆくことです。

 

  「俳句の島」には現在、インターネット上で句会を開催する為に必要な

  システムを装備しています。

 

  即ち、簡単にパラメーターの設定・変更が可能な、汎用システムを

  利用し、投句を受付けるシステム画面、選句と選評を受付ける画面と

  句会参加者が自由に読み書きできる電子黒板(DROPB0Xを使用)

  が用意されております。

 

 

  投句結果は、投句システムから投句データを一括ダウンロードし、

  EXCELで集句集を作成し、投句者にEメールします。

  同様に、選句・選評を書き込める画面を用意し、EXCELで一覧表に

  纏め、参加者にEメールしております。

  参加者間の会話は、電子黒板に書き込んで貰えるようにしています。

 

  「俳句の島」では、現在毎月5つの句会が定期的に開催され、年間四回

  の俳句大会、そして幾つかの不特定の句会が開催されております。

 

  「俳句の島」の発足二年目となる2019年には、「俳句の島」での

  ネット句会開催を、あたかも現実の句会で地区センターの部屋を予約

  するように、予約して利用できるようにしようと準備中です。

 

  インターネット上で行う句会(以下、ネット句会と言います)は既に

  多くの結社。個人が立ち上げておりますが、誰でも自由に使えるネット

  上の句会の場はありません。

 

     それなら自分でそういうネット上の場を立上げてしまおうと考えた訳

  です。

 

2.俳句界の現状

 

  現在、夏井いつきさんの俳句番組が人気を博しています。

  また、学校教育の場に於いても、俳句教育が取り入れられて来ており、

  部活動としての俳句も俳句甲子園といった大きな催しも開催されてい

  ます。

     そしてテレビ・新聞・誌等で、多くの方々が俳句文化を楽しまれ、

  時に自分なりの実作を楽しまれています。

 

  しかし、俳句文化の中核を担っている俳句結社の現状は、会員の高齢

  化、会員数の減少といった財政面の悪化から解散する有名結社が増加

  するという大きな悩みを抱えています。

  平成31年1月号の「俳句界」の79頁で日本最大の俳句結社である

  「ホトトギス」の購読者数が全盛期の三割にみたなくなっていること

  が、他でもない「ホトトギス」主宰の稲畑廣太郎氏の筆で書かれてい

  ます。

 

   このような現状を鑑みると、万葉集の詠み人知らずの和歌の時代から、

  和歌の連歌、俳諧の連歌、松尾芭蕉の蕉風を経て、明治になって連句の

  発句を俳句として独立させた正岡子規から現代までの日本の国民文化

  としての短詩形文化の伝統の継承に若干の不安を禁じ得ません。

 

3.何を未来に伝えるべきか

 

  短詩形文学を持つ民族は、アジアの少数民族等、日本以外にも沢山あり

  ます。

  しかし、民族国家を形成する規模の民族が国民レベルで短詩形文学を

  楽しむ国は日本以外にあるでしょうか。

 

  AIが進化を続ける未来は、多くの人々が自身を歴史の主役であると

  いう気概を持ちにくい時代になるようにも思います。

 

  そのような未来の物的生産がどのように行われているかは不透明では

  ありますが、その未来の人々の生き甲斐のひとつに短詩形文学がなり

  得る可能性があるのではないでしょうか。

 

  AIは既に佳い俳句を生み出すことが出来ます。

  しかし、命を持たないAIが命を持つ我々人類のように、「これは佳い

  俳句だ、命の俳句だ。」と鑑賞する時代は、まだまだ先のことと思い

  ます。

 

  日本人の短詩形文学である俳句は、日本が世界に発信し、そして未来に

  伝えるべきもののひとつであると思います。

 

4.未来に俳句文化を伝えるために

 

  「俳句の島」は、制度疲労が顕著となって来つつある「結社の時代」を

  乗り越え、俳句文化を次世代に伝える為のひとつの試みでもあります。

 

  俳句結社の制度疲労の原因には、電子媒体による紙媒体の駆逐という

  現実がひとつあるものと思います。

 

  電子媒体の作成に必要な労力は紙媒体とほぼ同一ですが、印刷コストに

  比べ、電子媒体の発行コストはほぼゼロに近く、加えて流通コストも

  ほぼゼロに近いものです。

 

  加えて、句集を例にとると、通常印刷媒体が数百部と限られた部数で

  あるのに対し、電子媒体である電子句集の発行可能部数は無数であり、

  その保存コストもほぼゼロです。

 

  俳句文化を未来に遺すという意味で、電子媒体は非常に優れた媒体で

  あると云えます。

 

  電子媒体は、句集のみならず、現在の結社誌のコストも劇的に低減させ

  得るものです。

 

  将来、電子媒体に馴染みの深い世代が俳句人口の主体となる時代には、

  結社誌を電子媒体とすることで、俳誌印刷のコストが不要となり、結社

  誌の発行部数を伸ばすコストは、ほぼゼロになります。

 

  電子媒体が俳句結社の財政に与え得る効果は非常に大きなものとなる

  ことが容易に想像できます。

 

  実は電子媒体が俳句文化の媒体となる時代には、財政面以上に俳句に

  とり大きな影響があるものと思います。

 

  それは、優秀な俳人が俳誌を発行し、結社を立ち上げるコストが、非常

  に安くなる為、新しい俳句の時代が来る可能性があるのです。

 

  電子媒体が俳句文化の主役となる時代は、同時に、既存の俳句結社の

  選別の時代でもあります。優れた俳人の低コストの俳誌に人が集まり、

  俳句文化が隆盛になる、俳句黄金時代を迎える可能性があるのです。

 

  「俳句の島」はそのような可能性を探るひとつの実験でもあるのです。

 

5.「俳句の島」のもうひとつの課題

 

  日本の短詩形文芸の永い伝統を受継ぐ俳句には、世界の詩、文芸にない

  宝物があります。

 

  それは、俳諧の連歌の発句の時代から受け継がれてきた発句係る様々な

  知識と理論です。

 

   未来の新しい俳句が、どのような進化を遂げるにせよ、松尾芭蕉に代表

  される俳諧の連歌の宗匠の時代から育まれた発句(=俳句)の理論を

  理解し、その上に新しい俳句を切り拓くことが重要と思います。

 

  これこそが日本人が誇るべき、短詩形文学の精華であり、世界と未来に

  向け伝えるべきものだと思います。

 

                               以上

 

                                2018年11月13日

 

【季語の役割】

 

 俳句には季語があります。

 

 季語の役割は大きく3つあります。

 

1.      春夏秋冬と新年の5つの季節を表す。

 

2.      詠み手の気持ち季語に託して詠む。

 

 (季語の本意に対する共通理解があることが前提としてある。)

 

3.      季語の前後に大きな切れがある。

 

  以上

 

                                   2018年11月11日

俳句の宇宙の中心について】

 

先日ある俳人から、「俳句の宇宙という言葉があるが、宇宙の中心は何だと

思うか」と尋ねられた。みなさんはどう思われますか。

 

 

私は「自分だ」と迷わず答えました。それは「俳句の宇宙」というものが

あるなら、それを観察し、俳句を作るのは自分自身以外にないからです。

 

「自分を宇宙の中心置き、俳句を作る」すこしわくわくする気持ちになりま

せんか。 

 

「俳句の主語は(書かれていなければ)自分だ」とも云われますが、これは

「宇宙の中心に自分が居て、俳句を詠む」以上、自明のことですね。

 

 また、「俳句で自分を消せ」ということも、「宇宙の中心に自分が居て、俳句を

詠む以上、特別に強調する必要がなければ、書く必要のない重なりですね。

 

 そう「宇宙の中心に自分が居て、俳句を詠む」のであれば、自分の思いを、

剥き出しに云わずに、季語に思いを託して、穏やかに詠みたいと思いませんか。

 

                                  以上